- 2026年2月15日
『脈が飛ぶ』症状は危険?不整脈と高血圧の関係について
こんにちは。岡山市中区中納言にある「まつもと内科・循環器内科」院長の松本健佑です。
早いもので、2月2日の開院から2週間が経過しました。この短期間にも、「当院が心臓疾患の専門であること」を知って受診してくださる患者様が多く、身の引き締まる思いです。
特に多く寄せられるご相談が、「脈が飛ぶような感じがする」「胸がドキッとする」といった不整脈に関連する症状です。
今回は、こうした症状の原因の1つである「上室期外収縮(じょうしつきがいしゅうしゅく)」について、ガイドラインに基づいた大切な知識をお伝えします。
「脈が飛ぶ」の正体は、心臓の「フライング」
不整脈には多くの種類がありますが、脈が飛ぶ感覚の代表格が「期外収縮」です。
これは、本来の脈のタイミングよりも少し早く心臓がギュッと収縮してしまう(フライングする)現象です。その直後に一瞬、心臓が休む時間ができるため、私たちは「脈が飛んだ」と感じます。
期外収縮は、実は生まれたばかりの赤ちゃんにも見られますし、私自身も起こっています。人間は1日に約10万回も心臓を動かしていますが、その中で数回程度の期外収縮は、ほとんどの人が持っているものです。
多くの方は気づかずに過ごされていますが、敏感な方は「ドキッとする」「喉のあたりが詰まる感じ」として自覚されます。
「問題なし」と言われても、知っておいてほしいこと
病院で心電図やレントゲン、心臓超音波検査(エコー)、そして24時間の心電図(ホルター心電図検査)を行い、心臓そのものの形や働きに異常がない場合・心不全ではない場合などでは、「期外収縮はありますが、心配ないので気にしないでください」と説明されることが多いと思います。
しかし、ここで一つ心に留めておいていただきたい重要な事実があります。
それは、「今は大丈夫でも、将来の大きな病気のサインかもしれない」ということです。
ガイドラインが示す「心房細動」との深い関係
『2020年改訂版 不整脈薬物治療ガイドライン』では、非常に重要なことが明記されています。
「頻度の多い上室期外収縮は、新しい心房細動(しんぼうさいどう)の発症の予測因子となる」
つまり、上室期外収縮そのものは命に関わるものではなくても、それがある程度の頻度で出ている方は、将来的に「心房細動」という別の不整脈を発症するリスクが、そうでない方よりも高いことが分かっているのです。
心房細動は、心臓の中に血の塊(血栓)を作りやすくし、それが脳に飛ぶと深刻な「脳梗塞」を引き起こします。また、心臓のポンプ機能が乱れることで、「心不全」の原因にもなります。
「昔、大丈夫と言われたから」と過信せず、以下のような変化を感じた時は、改めて専門医への相談を検討してください。
- 症状を感じる回数が増えてきた
- 「ドキドキ」が続く時間が長くなった
背景に潜む「高血圧」というリスク
心房細動を引き起こす大きな要因の一つに、「高血圧」があります。 血圧が高い状態が続くと心臓の筋肉に負担がかかり、それが不整脈の引き金となります。
最新の『高血圧管理・治療ガイドライン 2025』でも、高血圧が心房細動や心不全の最大の危険因子であることが強調されています。期外収縮の頻度の多い方は、将来の心房細動のリスクを少しでも低下するために、ご自身の血圧管理を見直してみてはいかがでしょうか。高血圧の管理は、将来の心房細動や心不全・脳梗塞を防ぐための最高の予防になります。
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結びにかえて
当院のホームページには、私の信念としてこのような言葉を掲げています。
『病気の予防とその後のケアの両方を大切にし、患者さま一人ひとりが安心して日々を過ごせる医療を目指します』
ただ「異常なし」で終わらせるのではなく、患者様の背景にある生活習慣や将来のリスクまで見据えて、一緒に健康を守っていきたい。そんな「身近な循環器の専門医」でありたいと考えています。
「ちょっと脈が気になるな」という些細な不安でも構いません。岡山市中区の皆様の安心を支えるために、当院のドアはいつでも開いています。

※ホームページに掲載するための写真撮影の風景(心エコー)です。
参照資料
- 『2020年改訂版 不整脈薬物治療ガイドライン』 (日本循環器学会 / 日本不整脈心電学会 合同ガイドライン)
- 『高血圧管理・治療ガイドライン2025 (JSH2025)』 (日本高血圧学会)
- 『2025年改訂版 心不全診療ガイドライン』 (日本循環器学会 / 日本心不全学会合同ガイドライン)