- 2025年10月8日
- 2025年10月28日
ご家庭での血圧測定、腕で測る?手首で測る? 正しい血圧計の選び方
岡山市中区で2026年2月に開院予定の「まつもと内科・循環器内科」院長の松本です。
高血圧の治療や管理において、今や欠かすことのできないのが「ご家庭での血圧測定(家庭血圧)」です。病院の診察室で測る血圧は、緊張などから普段より高めに出てしまう「白衣高血圧」など、その時々の状況に左右されることがあります。
そのため、ご自宅でリラックスした状態で測定した血圧値は、日々の血圧の本当の姿を映し出す貴重な情報となり、治療方針を決める上で非常に重要になります。
さて、皆さんがご家庭で血圧を測る際、どのような血圧計をお使いでしょうか?家電量販店などに行くと、腕に巻く「上腕式」と、手首に巻く「手首式」が並んでいますが、私たち循環器内科医は、特別な理由がない限り「上腕式」の血圧計を強くお勧めしています。
今回は、その理由を最新のガイドラインの内容も踏まえて、分かりやすく解説します。
◆なぜ「上腕式」が推奨されるのか?
結論から言うと、上腕で測る方が、より正確な血圧値を測定できるからです。
日本の「高血圧管理・治療ガイドライン」でも、家庭血圧の測定には原則として「上腕カフ・オシロメトリック式(腕に巻くタイプの一般的な電子血圧計)」を用いるよう推奨されています。
その理由は、血圧を測定する場所の違いにあります。
- 上腕式: 心臓に近い、太い血管(上腕動脈)で測定します。そのため、血圧が安定しており、体の中心の血圧を正確に反映しやすいという利点があります。
- 手首式: 手首の細い血管(橈骨動脈)で測定します。手首は体の動きや位置によって血圧が変動しやすく、特に動脈硬化が進んでいる方などでは、上腕で測った値と大きな差が出ることがあります。
手首式は手軽で使いやすいというメリットがありますが、「測定のたびに値が大きく違う」場合があります。
◆手首式血圧計が推奨されない、もう一つの理由
手首式血圧計で正確な値を出すためには、測定時に手首を心臓の高さにぴったり合わせる必要があります。しかし、この「心臓の高さに合わせる」という動作が、実は意外と難しいのです。
手首の位置が心臓より低くなると血圧は高めに、逆に高くなると低めに測定されてしまいます。最新のガイドラインで紹介されている研究でも、手首式の血圧計を用いた介入研究では、血圧を下げる効果がはっきりと確認できなかったという結果が示されています。
これらの理由から、日々の健康管理や治療効果の判定に使う大切な血圧測定には、より正確で信頼性の高い「上腕式」の血圧計を選んでいただくことが非常に大切です。
◆正しい血圧の測り方
せっかく性能の良い上腕式の血圧計を選んでも、測り方が正しくないと正確な値は得られません。ぜひ以下のポイントを意識してみてください。
- 正しい姿勢で座る
- イスに深く腰掛け、背もたれに寄りかかります。
- 脚は組まずに、両足をしっかりと床につけましょう。
- カフ(腕帯)を心臓の高さに
- カフは、肘の関節から指1〜2本分あけた位置に、素肌か薄手のシャツの上から巻きます。締め付け具合は、指が1本入る程度が目安です。
- 測定する腕は力を抜き、テーブルなどの上に置きます。この時、カフの中心が心臓の高さになるように、クッションやタオルで高さを調整してください。
- 測定中は動かない・話さない
- 血圧の測定が始まったら、体を動かしたり、おしゃべりしたりしないようにしましょう。

測定した血圧と脈拍は、ぜひ血圧手帳やスマートフォンのアプリなどに記録してください。その日々の記録が、ご自身の健康状態を把握し、適切な治療へと繋がる何より大切な情報になります。
◆安心して治療を続けるために
高血圧は自覚症状がないまま進行し、心不全や脳卒中、心筋梗塞といった命に関わる病気の大きな原因となります。しかし、ご家庭で正しく血圧を測定し、それを医師と共有することで、ご自身に合った適切な治療を行うことができます。
すでに手首式の血圧計をお持ちの方も、一度、上腕式の血圧計での測定値と比較してみることをお勧めします。
当院は、岡山市中区中納言町にて2026年2月の開院に向け、準備を進めております。血圧のことでご心配なこと、どの血圧計を選べば良いか分からないなど、どんな些細なことでもお気軽にご相談ください。
地域の皆様の健康に寄り添えるクリニックを目指してまいります。
まつもと内科・循環器内科
院長 松本 健佑