• 2026年3月4日

「降圧薬はずっと飲み続けないといけないの?」ー肥満と高血圧の関係

岡山市中区の「まつもと内科・循環器内科」院長の松本です。

外来で高血圧の治療を始めるとき、多くの患者さんからいただく質問があります。

「先生、この薬は一度飲み始めたら、一生やめられないんでしょうか?」

確かに、多くの生活習慣病の薬は、長期間の継続が必要な場合が少なくありません。

しかし「高血圧となった原因によっては、お薬を卒業できる可能性があります」

当院では、『病気の予防とその後のケアの両方を大切にし、患者さま一人ひとりが安心して日々を過ごせる医療を目指します』という理念を掲げています。ただ数値を下げるだけでなく、最終的にはお薬に頼らなくても健康を維持できる状態を目指すことは、非常に大切だと考えています。

今回は、お薬を減らせる可能性が高い「肥満と高血圧」の関係についてお話しします。


「1kgの減量」が血圧を「1mmHg」下げる

高血圧の大きな原因の一つが「肥満」です。

最新の『高血圧管理・治療ガイドライン2025(JSH2025)』では、肥満の方は非肥満の方に比較して高血圧の割合が2〜3倍多いと記載されています。また肥満症の方では睡眠時無呼吸症候群を合併することもあります。

減量の大切さはよく知られており、「体重が1kg減ると、血圧がおよそ1mmHg下がる」という報告もあります。

「たった1mmHg?」と思われるかもしれませんが、これは非常に大きな変化です。

例えば、5kgの減量に成功すれば、血圧が5mmHg下がります。これは、一般的な血圧の薬1種類分に匹敵する効果をもたらすことがあるのです。

ガイドラインでは、肥満を伴う高血圧症の方は、現在の体重から「3%以上の減量」で有意な降圧効果が期待できる、とされています。血圧が下がることで血管への負担は劇的に軽くなり、将来の心疾患や脳卒中などの動脈硬化疾患の予防につながります。


日本の現状:男性の3割以上が「肥満」という事実

では、そもそも「肥満」とはどの程度の状態を指すのでしょうか。

日本における定義は、身長と体重から算出されるBMI(体格指数)が 25以上であることです。

「令和6年国民健康・栄養調査の概要」によると、日本の現状は以下のようになっています。

  • 20歳以上の男性の肥満者割合:31.5%
  • 20歳以上の女性の肥満者割合:21.1%

実に、成人男性の3人に1人が肥満に該当します。

さらに、長期的な統計である「NIPPON DATA」では、男性の肥満有病率は右肩上がりに上昇しています。


「薬の卒業」に向けた安全なステップ

知らない間に体重が増加し、高血圧となってしまった方は、「増えてしまった体重を適正に戻すことで、血圧も元の正常な値に戻せるチャンスがある」ということになります。

しかし、「体重が減ったし、血圧も下がった気がする。今日から薬をやめよう!」と自己判断するのは禁物です。

急に服用を中止すると、血圧が急上昇し、脳出血や心筋梗塞を引き起こす危険があるからです。

当院では、以下のようなステップで「薬の卒業」をサポートします。

  1. 原因の特定: 肥満、塩分過多、運動不足など、血圧を上げている要因を一緒に探します。
  2. 生活習慣の改善: 無理のない減量計画や、続けられる減塩のコツをご提案します。
  3. 家庭血圧のモニタリング: ご自宅での血圧が安定しているかを確認します。
  4. 段階的な減薬: 体重減少に伴って血圧が下がってきたら、お薬の量を半分にしたり、種類を減らしたりしながら、慎重に経過を見守ります。

安心して日々を過ごしていただくために

高血圧の治療は「薬を飲むこと」がゴールではありません。

高血圧の治療は、血圧を低下させることで皆さんの大切な血管が傷つかないように守り、心筋梗塞や脳梗塞といった大きな病にならないよう予防することです。生活習慣の改善によって、薬の内服が必要なくなるのであれば、それが一番の理想です。

「最近、お腹周りが気になってきた」「健診で血圧が高いと指摘された」という方は、ぜひ一度ご相談ください。

皆さんが「悪くなる前に防ぐ」ための最善のアドバイスをさせていただきます。

岡山市中区の「まつもと内科・循環器内科」は、あなたの健康の伴走者として、お薬の卒業という目標にも一緒に取り組んでまいります。


【引用文献】 

  • 『高血圧管理・治療ガイドライン2025 (JSH2025)』 (日本高血圧学会)
  • Neter JE, et al. Influence of weight reduction on blood pressure: a meta-analysis of randomized controlled trials. Hypertension. 2003;42(5):878-884.
  • 令和6年 国民健康・栄養調査結果の概要https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001603146.pdf
まつもと内科・循環器内科 ホームページ