• 2026年4月14日
  • 2026年5月20日

【講演会レポート】HF Frontier Forum ー 岡山市立総合医療センター・河合勇介先生のご講演

こんにちは。岡山市中区中納言町の「まつもと内科・循環器内科」の松本健佑です。

先日(2026年4月13日)、「HF Frontier Forum」という心不全に関する勉強会に参加してきました。 岡山における心不全診療の第一線でご活躍されている河合勇介先生(岡山市立総合医療センター)、そしてガイドライン作成にも深く携わられている彦惣俊吾先生(奈良県立医科大学教授)のご講演を拝聴し、最新の知見を深めてまいりました。

今回はその中で、糖尿病を治療中、あるいは指摘されている皆様にぜひ知っておいていただきたい大切な内容を共有します。

「血糖値を下げること」「HbA1cの数値を改善すること」 もちろん、これらは非常に重要です。しかし、これらはあくまで「手段」に過ぎません。

糖尿病治療の最大の目的は、「合併症の発生を予防し、健康寿命(心身ともに自立して過ごせる期間)を延ばすこと」にあります。

そのためには、血糖値という「点」の数字だけを見るのではなく、体全体のリスクを適切に診断し、包括的な治療を行う必要があります。

糖尿病の重要な合併症の一つに、「心臓の病気」があります。狭心症や心筋梗塞といった、動脈硬化が進むことで起こる疾患です。

統計では、2型糖尿病の患者さんは、血糖値が正常な方と比べて冠動脈疾患や脳卒中になるリスクが1.5〜3.6倍も高くなると言われています。

特に以下に当てはまる方は、より慎重なリスク評価が必要です。

  • 糖尿病の期間が長い方(10年以上)
  • 40歳以上の方
  • 糖尿病に加え、高血圧・脂質異常症・喫煙・慢性腎臓病(CKD)などのリスクがある方
糖代謝異常者における循環器病の診断・予防・治療に関するコンセンサスステートメントから引用

なぜ、ここまで慎重な検査が必要なのでしょうか。 それは、「HbA1cが正常範囲であっても心臓のトラブル(心血管イベント)は起こりうる」からです。

薬でHbA1cを下げさえすれば、心臓病のリスクが必ず減るとも限りません。つまり、糖尿病の方は「血糖値の管理」と並行して、「心臓や血管に大きな問題が隠れていないか」を評価し、早めに介入することが重要なのです。

当院ではガイドラインに基づき、以下のような検査を定期的に行うことを推奨しています。

  • 心電図検査
  • ABI・CAVI(血管年齢・動脈硬化の指標)
  • 頸動脈エコー
  • 冠動脈石灰化スコア評価(CTを用いた評価)

インスリン治療などの専門的な管理については、必要に応じて糖尿病専門医の先生方とも連携しつつ、当院では循環器専門医の立場から、動脈硬化や心不全を防ぐためのアプローチに注力しております。

特に、近年注目されているSGLT2阻害薬(フォシーガ・ジャディアンスなど)やGIP/GLP-1受容体作動薬(マンジャロ)は、血糖を下げるだけでなく、心不全の予防や心血管保護の観点からも非常に重要な薬剤です。これらの処方・管理については、循環器専門医として豊富な経験があります。

糖尿病の治療において、血糖管理はもちろん大切です。それと同じくらい、動脈硬化から心臓や脳を守ることも重要です。

たとえ合併症が避けられない状況であったとしても、QOL(生活の質)を損なわず、自分らしい生活を続けていただけるよう、私たちが継続的にサポートいたします。

当院では、「病気の予防とその後のケアの両方を大切にし、患者さま一人ひとりが安心して日々を過ごせる医療を目指す」という理念のもと、高血圧・糖尿病・脂質異常症などの生活習慣病診療にも力を入れています。

「健診でHbA1cが高いと言われた」「今の治療を続けていてよいか不安」という方は、ぜひお気軽にご相談ください。循環器専門医の視点から、心臓の状態を含めて丁寧に評価いたします。

当院は岡山市中区にありますが、旭川を渡ってすぐの場所に位置し、北区(表町・内山下方面)からもアクセスしやすい立地です。広い駐車場も完備しております。


この記事に関連したQ&A

自覚症状がまったくないのに、糖尿病で心臓の検査を勧められました。本当に必要なんでしょうか?

糖尿病に関連する心臓や血管の病気は、かなり進行するまで自覚症状が出にくいことが知られています。HbA1cの数値が落ち着いていても心血管イベントのリスクがゼロになるわけではなく、症状が出てから対処するより、無症状の段階で評価しておく方が予後に影響することがあります。特に糖尿病歴10年以上、40歳以上、高血圧や脂質異常症を合併している方はリスクが上がるため、症状がないこと自体を安心の根拠にしない方が無難です。

フォシーガやジャディアンスって、血糖を下げる以外にも効果があると聞いたのですが本当ですか?

はい、SGLT2阻害薬(フォシーガ・ジャディアンスなど)は、複数の大規模臨床試験で心不全の入院リスク低下や腎保護効果が示されており、糖尿病の有無にかかわらず処方されるケースも増えています。GIP/GLP-1受容体作動薬のマンジャロも、心血管保護の観点から注目されている薬剤です。ただし、どれが自分に合うかは腎機能・体重・他の合併症などによって変わるため、主治医と相談しながら選択するのが重要です。

動脈硬化の検査って痛いですか?具体的にどんなことをするのか知りたいです。

ABI・CAVIは腕と足首に血圧計のような装置を巻いて同時に計測する検査で、痛みはほとんどなく数分で終わります。血管の硬さや動脈硬化の進行度を数値で確認できます。頸動脈エコーは首に超音波プローブを当てるだけなので体への負担は小さい。冠動脈石灰化スコアはCTを使いますが、多くの場合は造影剤なしで短時間で完了します。

糖尿病の管理は内科・糖尿病専門医と循環器専門医のどちらに診てもらえばいいのか迷っています。

それぞれ強みが違います。血糖コントロールの調整やインスリン導入・管理は糖尿病専門医の領域で、細やかな対応が得られます。一方、動脈硬化の評価・心不全リスクの管理・心保護目的での薬剤選択については循環器専門医の視点が重要になります。両方の観点が必要な状態であれば、かかりつけ医に状況を整理して相談し、適切な専門医への紹介をつないでもらうのが現実的です。

糖尿病と診断されたら、まず日常生活で何を変えればいいですか?

食事と身体活動の見直しが基本です。体重が5〜10%減るだけで血糖コントロールや血圧に改善が見られることがあります。喫煙は動脈硬化を著しく加速させるため、糖尿病がある場合の禁煙は特に優先度が高い。それに加えて、血圧と脂質の管理も心臓を守るうえで血糖管理と同じくらい重要とされているので、定期的な検査を続けながら複数のリスクをまとめてコントロールしていく意識が大切です。

まつもと内科・循環器内科
院長 松本 健佑(循環器専門医)


【参照資料】

  • 『糖代謝異常者における循環器病の診断・予防・治療に関するコンセンサスステートメント』日本循環器学会・日本糖尿病学会 合同委員会

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