• 2026年4月4日

『ブルガダ型心電図』と言われたら? ー 健診で指摘された方へ

健診の結果で「ブルガダ型心電図」という言葉を目にすると、多くの方が驚き、不安を感じられることでしょう。
インターネットで検索して「突然死」という言葉にさらに怖くなってしまった方もいらっしゃるかもしれません。

今回は、2026年3月20日に発行された最新のガイドラインと、私自身の循環器専門医としての経験を踏まえ、ブルガダ型心電図と言われたときに知っておいていただきたい正しい知識と、ご家族で取り組んでいただきたい大切な備えについてお話しします。


1. ブルガダ型心電図(ブルガダ症候群)とは?

ブルガダ症候群は、心電図で「コブド型(coved type)」と呼ばれる特徴的な波形が認められた際に診断される心臓の病気です 。

  • 日本人に多い: アジア人、特に30〜50代の男性に多く見られるのが特徴です 。日本人成人では約0.1〜0.3%に認められます 。
  • 無症状がほとんど: 多くの方は自覚症状がなく、健康診断で初めて指摘されます 。そのため「ブルガダ型心電図」と呼ばれることがあります。

2. なぜ注目されるのか?

この心電図を持つ方の一部では、夜間や睡眠中に「心室細動」という危険な不整脈が発生し、意識を失ったり、まれに突然死に至る可能性があります。

ただし、過度に恐れる必要はありません。無症状の方における突然死発生率は、1年間で0.3〜0.5%程度と報告されています 。とはいえ、ブルガダ症候群でない方と比べるとリスクがわずかに高くなります。自動車を運転するときに、シートベルトを着用するのと同じように、適切な検査と対策を行うことが重要です。

3. 「専門医による診断」が重要な理由

健診で心電図異常が指摘されたからといって、すぐに病気だと確定するわけではありません。

  • 波形の判断: ブルガダ型かどうかは、専門医でも判断に迷うような「疑い」の波形が含まれることがありますし、心電図所見も日によって変化します。
  • リスク評価: 本物のブルガダ症候群なのか、そしてどの程度のリスクがあるのかを評価するには、経験豊富な専門医の診断が不可欠です 。

特に、以下に該当する方は早めに不整脈専門医を受診してください。

  • 失神(意識消失)の既往がある
  • 血縁者に突然死の既往がある

4. 日常生活で気をつけるべき「4つのポイント」

ブルガダ症候群と診断された方の約90%は、これまでに大きな症状がない「無症候性」の状態です 。この場合、すぐに薬物治療や植込み型除細動器などを行うことはなく、定期検査と、生活上の注意が推奨されます 。

  1. 飲酒と食事: 過度な飲酒や、暴飲暴食は避けましょう 。
  2. 発熱時の対応: 熱が出ると危険な不整脈が誘発されやすくなります。早めに解熱剤を使用して熱を下げ、こまめに水分を補給してください 。
  3. 避けるべき薬: 特定の抗不整脈薬や向精神薬、麻酔薬などが影響を及ぼすことがあります 。病院や薬局では必ず「ブルガダ型心電図がある」と伝えてください 。
  4. 症状への注意:動悸や失神などがあれば、迷わずすぐに医療機関を受診してください 。

5. 院長からのアドバイス:ご家族も「チーム」の一員です

ここからは、日々の診療で特にお伝えしている大切な点です。

ご自身がブルガダ症候群と診断されたら、ぜひご家族にもその内容を共有してください

ブルガダ症候群による不整脈は、多くの場合「夜間・睡眠中」に起こります。つまり、夜間の自宅でおこり、第一発見者はご家族になる可能性が非常に高いのです。

  • 一緒に説明を聞く: 当院では、診断がついた際の説明に、同居されているご家族の同席をご提案しています。
  • 基礎知識を持つ: 万が一に備え、ご家族が「心肺蘇生」や「救急要請」をスムーズに行える知識を持っておくことが重要です。

過度に恐れる必要はありませんが、正しく備えることで、ご本人もご家族も安心して日々を過ごせるようになります。


結びにかえて

当院では『病気の予防とその後のケアの両方を大切にし、患者さま一人ひとりが安心して日々を過ごせる医療』を目指しています 。

私は約10年間、心臓病センター榊原病院で、心室細動をはじめとする一刻を争う重症患者さんの治療に携わってきました 。その経験から、「悪くなってから治療する」のではなく、「悪くならないように備える」ことの重要性を強く感じています。

健診結果で不安を感じた方は、一人で悩まず、ぜひ一度ご相談ください。
専門医としての知識と、地域のかかりつけ医としての身近な視点の両方から、あなたとご家族の安心をサポートいたします。

まつもと内科・循環器内科
院長 松本 健佑
資格:循環器内科専門医


参照資料

  • 『2026 年改訂版 遺伝性不整脈の診療に関するガイドライン』日本循環器学会 / 日本不整脈心電学会

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