• 2026年3月16日

「LDLコレステロールが高い」と言われたら? ー 将来の病気を防ぐための「久山町スコア」を循環器専門医が解説します

岡山市中区のまつもと内科・循環器内科院長の松本です。

2026年2月の開院以来、地域の皆さまに少しずつ当院の存在を知っていただいているようで、最近では健康診断の結果を持参される方も増えてまいりました。

先日も「健康診断でLDLコレステロール(悪玉コレステロール)が高いと指摘され、不安になって…」とご相談に来られた方がいらっしゃいました。

そこで今回は、『動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版』に基づき、

・LDLコレステロールが高いと言われたときの考え方

・薬が必要な人と生活習慣改善から始める人の違い

・将来の病気のリスクを評価する「久山町スコア」

について、循環器専門医の立場からわかりやすく解説します。


1. LDL-コレステロールが高いと言われたら:薬が必要になる人の特徴

LDLコレステロールが高いと言われた際、まず重要なのは「二次予防」か「一次予防」かを区別することです。

  • 二次予防の方
    すでに心筋梗塞や狭心症、アテローム血栓性脳梗塞を経験されている方です 。
    この場合は、再発を防ぐことが最優先であり、ガイドラインでも脂質管理目標値が非常に低く設定されています。そのため、基本的にはお薬による治療が必要となります。
  • 一次予防の方
    これまで大きな病気をしたことがない方です 。
    まずは生活習慣の改善(食事・運動習慣の見直し)から開始することが一般的です。「コレステロールが高い=すぐに薬」とは限りません。

一次予防において大切なのは、『長く無理なく続けられる生活習慣の改善』です。

いきなり『明日からおやつを一切食べない!』といった極端な目標を立てても長続きしないものです。
まずはできることから少しずつ生活習慣を整えていくことが大切です。
また、そうして取り組んでいく途中で、どうしても数値が下がりにくい場合や、もともとのリスクが高い場合には、お薬の力を借りることも有効な選択肢になりえます。

2. 「10年後のリスク」を予測する:久山町スコアとは

ガイドラインでは、単にコレステロールの数値だけを見るのではなく、複数の要素を組み合わせて「今後10年間に動脈硬化による病気が発症する確率」を算出します 。

その指標が「久山町スコア」です。

久山町スコアとは

久山町スコアとは、日本人の長期疫学研究である久松町研究のデータを基に作られた、10年間の心血管疾患発症のリスクを推定する指標です。

久山町スコアの6つの評価項目

  1. 性別:男性の方がポイントが高くなります 。
  2. 血圧:収縮期血圧(上の血圧)が高いほどリスクが上がります 。
  3. 糖代謝異常:糖尿病ではないものの、血糖値が高い状態があるか 。
  4. LDLコレステロール値:数値の段階に応じて加点されます 。
  5. HDL(善玉)コレステロール値:低い(40mg/dL未満)とリスクが高まります 。
  6. 喫煙の有無:現在タバコを吸っている方は、大きなリスク要因となります 。

このポイント合計から、将来の発症確率が「低リスク」「中リスク」「高リスク」のどこに該当するかを判定します。

3. LDLコレステロールが高い人の治療目標

リスク分類によって、目指すべき管理目標値は異なります。

具体例①

40歳代男性、LDL-C170mg/dlを健診で指摘

この方に高血圧症や糖尿病がなく、タバコも吸わない場合、久山町スコアは「7ポイント」となります。

この場合の10年間の発症リスクは1.0%未満(低リスク)と判定されます。

すぐに投薬を開始するのではなく、まずは食事や運動に気を配り、LDL-Cを160mg/dl未満に下げることを目指します。

具体例②

60歳代男性、LDL-C170mg/dl、高血圧症(収縮期血圧145mmHg程度)

この方の場合

・男性:7ポイント

・LDL-C160mg/dl以上:3ポイント

・収縮期血圧140〜159mmHg:3ポイント

合計13ポイントとなります。

動脈硬化性疾患予防ガイドライン(日本動脈硬化学会のホームページ)の69ページ図3-2を見ると、高リスクに分類され、10年間の発症リスクは10.4%です。

LDL-Cの管理目標も低く設定されますので、生活習慣の改善と並行して、早期から投薬治療をご提案する可能性があります。


専門医としてのメッセージ

「コレステロールが高いけれど、どこに相談すればいいかわからない」

「薬を内服するメリットを感じられない」

「現在の治療が適切か不安」

そのようなお悩みをお持ちの方は、ぜひ一度ご相談ください。

ガイドラインは医学の進歩とともに更新されます。循環器専門医として、最新の知見に基づき「なぜあなたにとってこの治療が必要なのか(あるいは、まだ不要なのか)」を、客観的なデータを用いて丁寧にご説明し、治療方針を提案します。

動脈硬化は、自覚症状がないまま進んでいく「サイレント・キラー」です。症状がないからといって放置せず、早めにリスクを適切に評価して対応する。それが10年後、20年後の健康を守る一番の近道です。

皆さまが将来も笑顔で過ごせるよう、適切な予防・治療を提案します。いつでもお気軽にご相談ください。

【引用文献】 

  • 『動脈硬化性疾患予防ガイドライン 2022年版』 (日本動脈硬化学会)
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