不整脈診療について
不整脈とはどのような病気か?
心臓は1日に約10万回、休むことなく規則正しいリズムで拍動し、全身に血液を送り出しています。このリズムをコントロールしているのが、心臓内を流れる「微弱な電気信号」です。
不整脈とは、この電気信号の発生場所や伝わり方に異常が生じ、心臓のリズムが乱れる状態を指します。
「脈が飛ぶ」「ドキドキする(動悸)」「脈が遅くなる」など、感じ方は人それぞれですが、不整脈には「様子を見てよいもの」と「命に関わる危険なもの」があります。これをご自身で判断するのは非常に困難です。少しでも違和感があれば、循環器専門医による診断を受けることが大切です。
代表的な不整脈の種類と症状・治療
不整脈は大きく「脈が速くなる(頻脈)」「脈が遅くなる(徐脈)」「脈が飛ぶ(期外収縮)」の3タイプに分けられます。
1. 心房細動(しんぼうさいどう)
心臓の上部(心房)が小刻みに震え、脈が完全にバラバラになる不整脈です。高齢化に伴い、非常に増えている疾患です。
- 症状: 動悸、息切れ、胸の不快感。ただし、自覚症状が無い方もいます。
- リスク: 最も怖いのは、心臓内にできた血の塊(血栓)が脳へ飛んで起こる「脳梗塞」です。
- 治療: 血液をサラサラにする「抗凝固薬」による予防に加え、より根本的な治療として「カテーテルアブレーション」を検討します。
2. 期外収縮(きがいしゅうしゅく)
本来のリズムとは異なるタイミングで「ドックン」と脈打つ、最も頻度の高い不整脈です。
- 症状: 「脈が飛ぶ」「一瞬胸が詰まる」「のどがキュッとする」。
- リスク: 多くは良性ですが、頻度があまりに多い場合は心臓のポンプ機能が低下し、心不全の原因になることもあります。頻度の評価はホルター心電図検査で行います。
- 治療: 症状が強い場合や心機能への影響がある場合に限り、内服薬やカテーテル治療を行います。
3. 徐脈性不整脈(脈が遅くなるタイプ)
「洞不全症候群」や「房室ブロック」など、電気信号が弱まったり途切れたりして、脈が極端に遅くなる状態です。
- 症状: めまい、ふらつき、強いだるさ、失神(気を失う)。
- 治療:日常生活に支障がある場合や重症度が高い場合は、心臓の拍動をサポートする「ペースメーカ」の植込みが必要になります。
4. 心室細動(しんしつさいどう)
心臓が痙攣して血液を送り出せなくなる、最も危険な状態です。
- 症状: 突然倒れる、意識を失う。放置すれば数分で死に至ります。
- 治療:直ちにAEDによる電気ショックが必要です。再発予防として、体内に「植込み型除細動器(ICD)」を設置する治療が行われます。
当院の検査・診断体制
不整脈は「出たり消えたり」することが多いため、適切な検査で正体を突き止めることが重要です。
| 検査名 | 目的と特徴 |
|---|---|
| 12誘導心電図 | 来院時の心臓の状態を短時間で確認する基本の検査です。 |
| ホルター心電図 | 小型装置を装着し、24時間の心電図を記録します。動悸症状が不整脈に原因があるか、などを評価します。 |
当院の治療方針
不整脈治療の3つの柱を軸に、患者様一人ひとりに最適な道筋をご提案します。
- お薬による管理: 自覚症状の軽減のための不整脈自体に対する薬や、不整脈による脳梗塞や心不全を防ぐための薬の調節を行います。
- 高度専門医療への連携: カテーテルアブレーションやペースメーカ手術が必要な場合は、高度医療機関へ速やかにご紹介します。
- 生活習慣の改善: 不整脈は高血圧、睡眠時無呼吸症候群、過度な飲酒、ストレスと深く関係しています。根本からの改善を目指します。
院長からひとこと
「たまに感じる動悸」に、心臓からの重要なサインが隠れているかもしれません。
不整脈には、治療の必要がない「心配のないもの」から、脳梗塞や突然死に直結する「怖いもの」まで存在します。厄介なのは、「症状の強さ」と「病気の危険度」が必ずしも一致しないことです。「たまにドキッとするだけだから」と見過ごされていた動悸が、実は重篤な脳梗塞の予兆であったというケースを、私は数多く見てきました。
私は約10年間、不整脈や心不全の急性期治療に携わってまいりました。
その経験から確信しているのは、不整脈診療において最も大切なのは「正確な診断のタイミングを逃さない・不整脈による心不全、脳梗塞の予防」です。
特に心房細動などは、早期発見・早期治療によって根治を目指せる時代になっています。また、デバイス(ペースメーカ等)治療の適切なタイミングを見極めることは、皆様のその後の人生の質(QOL)を大きく左右します。
「この動悸は大丈夫かな?」と少しでも不安に思われたら、どうぞ迷わずご相談ください。循環器専門医として、皆様の心臓の状態を正しく評価し、誠実に対処いたします。