WEB予約
  • 2026年10月1日
  • 2026年10月9日

「CKM症候群」とは ― 心臓・腎臓・代謝をひとつながりで見る新しい考え方

こんにちは。岡山市中区中納言町の「まつもと内科・循環器内科」院長の松本健佑です。

健診で「血圧が少し高め」「血糖が境界型」と言われたり、メタボリックシンドローム(メタボ)の「予備群」や「基準該当」 と判定されたりしたことはありませんか。

一つひとつは軽く見えても、これらは実はつながっています。その考え方が 「CKM症候群」 です。

CKM症候群とは

CKMは、Cardiovascular(心臓・血管)、Kidney(腎臓)、Metabolic(代謝)の頭文字です。

心臓病・腎臓病・肥満や糖尿病などの代謝の異常は、互いに影響し合いながら進んでいきます。2023年に米国心臓協会がこれを ひとつながりの病気の流れ として整理し、早い段階から、心臓・腎臓・代謝をまとめて見ることを提言しました。

・始まりは「内臓脂肪」

流れの始まりは、多くの場合 内臓脂肪 や、本来は脂肪がつかない肝臓・筋肉などにたまる 異所性脂肪 です。

これらが増えると、インスリンが効きにくくなり(インスリン抵抗性)、血糖・血圧・脂質の異常や、腎臓への負担につながっていきます。血糖値がまだ正常な段階から、この変化は始まっています。

5つの段階(ステージ)

体重・血糖・血圧・脂質・腎臓のいずれも正常な状態です。

  • ステージ0:すべて正常

→ 今の良い状態を保ちましょう。

  • ステージ1:肥満、または血糖が境界型

体重が多い、お腹まわりが大きい、または血糖が境界型(糖尿病予備群)の状態です。

→ 生活習慣の見直しで、次の段階に進ませないことが大切です。

  • ステージ2:高血圧・脂質異常症・糖尿病・慢性腎臓病がある

メタボリックシンドロームと判定された方も、この段階に含まれます。

→ きちんと治療して、心臓と腎臓を守ります。

  • ステージ3:症状はないが、心臓・血管に変化が出始めている

自覚症状はなくても、検査で心臓や血管の病気の兆しが見つかる段階です。血液検査や心エコーで見つかる 「前心不全」 や、症状のない動脈硬化がこれに当たります。

→ 早めに見つけて、発症を防ぎます。

  • ステージ4:心臓・血管の病気を発症している

心筋梗塞・心不全・脳卒中・心房細動などを発症した状態です。

→ 再発や悪化を防ぎます。

段階が進むほど、心臓・血管の病気のリスクは高くなります。症状のないステージ1〜3で気づくこと が何より大切です。

心不全・メタボとの関係

日本の「心不全のステージ」との関係

日本の心不全診療ガイドライン(2025年改訂版)でも、心不全を、症状が出る前から4つのステージに分けて考えています。CKM症候群のステージとは、次のように重なります。

  • 心不全ステージA「心不全リスク」 ⇔ CKMステージ1〜2

高血圧・糖尿病・慢性腎臓病・メタボリック症候群と肥満などがあるものの、心臓そのものにはまだ異常がない段階です。

  • 心不全ステージB「前心不全」 ⇔ CKMステージ3

症状はないものの、次のどれかがある段階です。

  • 心臓の形や働きの変化(心臓の筋肉が厚い、ポンプの力が落ちている、弁膜症など)
  • 心臓の中の圧が上がっている所見
  • 血液検査で BNP 35 pg/mL以上、または NT-proBNP 125 pg/mL以上(ほかに原因となる病気がない場合)

※心房細動のある方、ご高齢の方、慢性腎臓病の方では、より高い値が目安になります。

  • 心不全ステージC「症候性心不全」・D「治療抵抗性心不全」 ⇔ CKMステージ4

息切れやむくみなどの症状が現れた(または過去に現れた)段階です。

つまり、心臓・腎臓・代謝の異常を早くから見ていくことは、心不全を防ぐことそのものでもあります。前心不全については、「症状のない『前心不全』とは?」でも紹介しています。

健診の「メタボ判定」との関係

日本の健診のメタボ判定は、お腹まわり(腹囲:男性85cm以上、女性90cm以上) に加えて、血圧・血糖・脂質の異常がいくつ重なっているかで決まります。

  • 基準該当:CKM症候群のステージ2に当たります。
  • 予備群該当:ステージ1〜2の入り口にいる状態です。

どちらも、まだ症状のない段階です。今から手を打てば、先の段階に進むのを防ぐことができます。

受診の目安と検査

  • 血圧・血糖(HbA1c)・コレステロール
  • 腎臓:血液検査(eGFR)、尿検査(尿アルブミン・尿蛋白)
  • 心臓:血液検査(BNP・NT-proBNP)、心電図、心エコー

当院では、必要に応じてこれらをあわせて確認し、今どの段階にいるのかをお伝えしています。

こんな方は一度ご相談ください

  • 健診で メタボの「予備群」や「基準該当」 と判定された
  • 血圧・血糖・コレステロールのうち 2つ以上が「やや高め」 と言われた
  • 尿検査で 蛋白やアルブミン を指摘された
  • 血液検査で BNP や NT-proBNP が高め と言われた
  • ご家族に、心臓病・腎臓病・糖尿病の方がいる

よくあるご質問

Q. 健診でメタボの「予備群」と言われました。受診したほうがよいですか?

予備群は、まだ症状のない早い段階です。この段階で血圧・血糖・脂質に加えて腎臓の状態も確認しておくと、今後の対策が立てやすくなります。健診の結果用紙をお持ちください。

Q. 血糖値は正常と言われています。それでも気にしたほうがよいですか?

内臓脂肪が多い方では、血糖値が正常でも、インスリンを多く出して血糖を保っている段階のことがあります。お腹まわりや血圧、腎臓の検査もあわせて見ることが大切です。

Q. 腎臓の検査は、なぜ必要なのですか?

腎臓は、悪くなっても症状がほとんど出ません。一方で、腎臓の働きの低下は、心臓病のリスクを高めることがわかっています。尿検査(尿アルブミン)や血液検査(eGFR)で、早めに変化をとらえることが大切です。

Q. 症状はないのに、BNPが少し高いと言われました。

症状がなくても、心臓に負担がかかり始めているサインのことがあります(前心不全)。心電図や心エコーで心臓の状態を確認し、原因に合わせて対策を考えます。

ご受診をお考えの方へ

健診の結果で気になることがあれば、結果用紙をお持ちください。

ご自身やご家族のことで気になることがあれば、どうぞお気軽にお声かけください。


参考文献

  1. Ndumele CE, et al. Cardiovascular-Kidney-Metabolic Health: A Presidential Advisory From the American Heart Association. Circulation. 2023;148:1606-1635.
  2. 日本循環器学会/日本心不全学会. 2025年改訂版 心不全診療ガイドライン. 2025.

※この記事は、ガイドラインや提言の改定に合わせて内容を見直しています。


関連ページ

まつもと内科・循環器内科 ホームページ